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シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)

【株式会社富士メガネ】代表取締役会長・社長兼任 金井 昭雄 氏
シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)


【株式会社富士メガネ】代表取締役会長・社長兼任 金井 昭雄 氏</br> シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)


創業者は、社会の課題解決のため、また、人々のより豊かな幸せを願って起業しました。

その後、今日までその企業が存続・発展しているとすれば、それは、不易流行を考え抜きながら、今日よく言われるイノベーションの実践の積み重ねがあったからこそ、と考えます。

昨今、社会構造は複雑化し、人々の価値観が変化するなか、20世紀型資本主義の在りようでは、今後、社会が持続的に発展することは困難であると多くの人が思い始めています。

企業が、今後の人々の幸せや豊かさのために何ができるか、を考える時、いまいちど創業の精神に立ち返ることで、進むべき指針が見えてくるのでは、と考えました。

社会課題にチャレンジしておられる企業経営者の方々に、創業の精神に立ち返りつつ、経営者としての生きざまと思想に触れながらお話を伺い、これからの社会における企業の使命と可能性について考える場にしていただければ幸いです。

 

(公益社団法人日本フィランソロピー協会理事長 高橋陽子)

 

【株式会社富士メガネ】代表取締役会長・社長兼任 金井 昭雄 氏インタビュー
第1回 第2回 第3回 第4回

掲載日:2017/3/9

創業45周年、難民視力支援活動がはじまる

高橋:1983年の富士メガネ創業45周年のとき、金井さんは、お父様と、当時社長だったお兄様に提案し、タイでのインドシナ難民視力支援活動を始められました。きっかけは、タイからの要請だそうですが?

金井氏:当時は第三国定住ルールがあり、タイ政府は、難民が第三国に行くまでの間キャンプを開いて、そこに国連機関が入り、難民認定や第三国定住の斡旋をしていました。キャンプは7、8か所あり、カンボジア人、ラオス人(平野部及び山岳民族)、ベトナムボートピープルなどが保護されていたんです。そこから第三国に向かうときに、視力障害があると行った先で苦労するので、視力補正してほしいという要請が、創業45周年の2、3年前にあり、メガネをあげたことがありました。本来は行かなくちゃダメだと思ったけれど、踏ん切りがつかなかった。それを45周年で決心しました。

高橋:社命で行ってもらったとか(笑)。

金井氏:地面にでも寝られる屈強な人を選びましたよ。タイもまだ発展途上で、空港もバラックのような建物でした。

高橋:メガネを空港の税関で没収されたりして、問題が起きたんですね。

金井氏:現地のパートナーが、我々のために世話をしてくれるような人じゃなかったので、メガネを取り戻したりして、一週間遅れてしまいました。現地では、UNHCR のメディカルコーディネーターが待っていて、外来クリニックの一部を借りて機材を設置し、手探り状態ではじめました。
鉄条網が二重に張り巡らされ、ゲートにはタイの兵隊が銃を持って立っていました。暑さと埃と強烈なにおいがして、異様な世界。「こんなところがあったんだ」、「日本は、平和にどっぷりつかっていたんだ」と思いましたよ。

高橋:日本にいては、決して知ることのない体験ですね。

視力支援で、難民の生活の質が向上する

【株式会社富士メガネ】代表取締役会長・社長兼任 金井 昭雄 氏</br> シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)

難民のおばあさんが、メガネで見えるようになると、まず孫の顔が見たいと大喜びでした。

金井氏:最初のタイへの難民視力支援では、新しいメガネを1,000組用意して、7割が近視、3割が遠視や老眼等で持って行ったんですが、現地では逆でした。多くが老眼と遠視だったので、あわててバンコクに戻って、メーカーのラボでメガネを作りました。それでも間に合わなくて、日本に帰って作りました。
実は、はじめは500組と思ったんですが、父に、もう500組持っていけといわれました。父の方が太っ腹でしたね。

高橋:メガネをもらった方は、想像以上の喜びでしょうね。

金井氏:手紙や本を読んだり、刺繍をしたりする人も多いので手作業をするときには、不自由していたと思います。強度の近視や乱視、遠視の子どももいました。遠視が強いと、目が内側に寄るケースが多いんです。アゼルバイジャンには、そんな子どもがいて、メガネをかけると魔法のように治るんです。昔は、白内障の術後に厚いレンズのメガネをかけたんですが、メガネのないおばあさんにメガネをかけさせたら、ぱっと見えるようになって大喜び。そういうときは、ほんとに役にたっているなと感じますね。

高橋:一気に見えるようになったら、生活も、明るくなりますよね。人生が変わります。

金井氏:メガネなしで、よく今まで生活できたなと思う事例もあります。アゼルバイジャンでは、遠視の学校の先生がいたんですが、40歳くらいで自分の教える指導書の字が読めなくなった。でも、現地ではメガネが作れないために、生徒に教えることもできない。メガネをあげたら見えるようになって、先生が「将来を担う子どもたちに誇りを持って生きるよう、また指導できる」と、喜んでいました。

高橋:お父様は、そういった報告を楽しみになさったでしょうね。

金井氏:自分も若かったら行きたかった、と言っていました。中国残留孤児(※1)の方が来られたときには、検査の現場に来てましたよ。父も引揚者ですし、困っている人がいたら、手を差し伸べる気持ちは強かったですね。

高橋:そんなお父様の背中が、有形無形に大きく影響してられるのですね。

※1 富士メガネでは1987年から、毎年、日本を訪れる中国残留日本人孤児のために、
   視力の確認と眼鏡を寄贈している。

(2016年12月6日札幌市内、株式会社富士メガネ グランドホテル前店にて)


つづく

プロフィール

【株式会社富士メガネ】代表取締役会長・社長兼任 金井 昭雄 氏</br> シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第三回)

金井 昭雄(かない あきお)氏
1942年樺太豊原市生まれ。1966年早稲田大学商学部卒業。1972年サザン・カリフォルニア・カレッジ・オブ・オプトメトリー卒業。カリフォルニア州オプトメトリー営業ライセンス取得。
1973年日本に帰国、富士メガネ入社。1996年富士メガネ社長就任。2006年富士メガネ会長に就任、国連難民高等弁務官事務所 「ナンセン難民賞」で日本人初の受賞。2007年富士メガネ会長・社長を兼任。
2009年緑綬褒章を受章。2012年渋沢栄一賞を受賞。
日本眼鏡技術者協会会長代行、WCO(世界オプトメトリー会議)理事、WOF(世界オプトメトリー財団)理事、APCO(アジア太平洋オプトメトリー会議)会長などを務めた。
現在、富士メガネ「海外難民・国内避難民視力支援ミッション」代表、グローバルコンパクト・ジャパン・ネットワーク理事、国連UNHCR協会理事、マーシャル B.ケッチャム大学(米国カリフォルニア州)理事

※「2017年1月、2017年ナンセン難民賞候補者ノミネートのプロモーションとして、視力支援活動を紹介した映像が、UNHCR本部のFacebook上で公開される。」
https://www.facebook.com/UNHCR/videos/10155926635978438/

インタビュアー

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高橋 陽子(たかはし ようこ)
岡山県生まれ。1973年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。高等学校英語講師を経て、上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。その後、心理カウンセラーとして生徒・教師・父母のカウンセリングに従事する。1991年より社団法人日本フィランソロピー協会に入職。事務局長・常務理事を経て、2001年6月より理事長。主に、企業の社会貢献を中心としたCSRの推進に従事。NPOや行政との協働事業の提案や、各セクター間の橋渡しをおこない、「民間の果たす公益」の促進に寄与することを目指している。

主な編・著書
『フィランソロピー入門』(海南書房)(1997年)
『60歳からのいきいきボランティア入門』(日本加除出版)(1999年)
『社会貢献へようこそ』(求龍堂)(2005年)

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